個人的評価 | |
クリア状況 | 全キャラ高難易度クリア |
プレイ時間 | 94.4時間 |
発売日 | 2023年9月15日 |
対応機種 | Steam,PlayStation 5,Xbox Series X|S,Nintendo Switch |
プレイ機種 | Steam |
開発元 | Little Leo Games |
発売元 | Little Leo Games |
個人的ジャンル | ダイスデッキ構築型ローグライク |
ゲームの特徴
『Astrea: Six-Sided Oracles』は、ダイスを用いたデッキ構築型ローグライクゲーム。プレイヤーは「六面のオラクル」の継承者として、堕落した星の住民を浄化し、星系を救う旅に出ます。カードの代わりにダイスを使用する独自のシステムが特徴で、運と戦略のバランスが求められる新鮮なゲームプレイを提供します。
おすすめポイント | こんな人は苦手かも。。 |
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目次
混沌と浄化の旅路へ
星が堕ちたその先で
この物語の舞台は、かつて希望に満ちていたが、“堕落”と呼ばれる闇に飲まれた星系。
長きに渡る混沌の中、浄化の力を宿す“オラクル”たちが最後の希望として目覚める。
彼らは“ダイス”に祈りを込め、浄化と堕落のはざまで選択を重ねていく。
明確な物語の進行やセリフのドラマはないが、ゲームプレイの中でのイベントや敵の姿、アイテムの断片的な説明文から、この世界に隠された歴史や真実を感じ取ることができる。
『Astrea』の物語は“語られすぎない”ことで、プレイヤー自身が想像し、感じ取りながら進んでいく。そんなストーリーだ。

光と影を宿す者たち ― オラクルたちの個性
プレイヤーが選択肢、操作できるキャラである“オラクル”たちだが、実はネーミングに意味があったりする。
たとえば、“ムーニィ”。
フクロウの姿をしたこのオラクルは、その名が示す通り「月」と深い関わりを持つ存在だ。
静かで神秘的な見た目と、冷静に戦況を見つめるようなスキル構成は、まさに夜空に浮かぶ月そのもの。
ゲームの序盤をともにするムーニィのプレイフィールは、プレイヤーにこの星系の静かなる絶望と希望を優しく伝えてくれる。
そして、“セラリウス”。
彼の名は、17世紀の天文学者アンドレアス・セラリウスに由来しているとされ、まさに「星を読む者」。
彼の戦術はより能動的で、ダイスの運命に“意図”を持たせるような立ち回りが求められる。
宇宙の理に触れるような感覚は、序盤から本作の奥行きを感じさせてくれる。
本作ではストーリーが明確に語られることはないが、キャラクターの名や姿、ダイスの演出ひとつひとつに、この世界を紐解くヒントが静かに息づいている。


運命を振り、戦略を選ぶ ― ダイスが創る戦いのリズム
カードではなく、ダイスで組むデッキ構築
『Astrea』は、一般的なデッキ構築型ローグライクと違い、カードではなく“ダイス”を使って戦略を組み立てる。
そのため、基本のプレイは 運要素 × 運要素 × 選択要素 という構造になっており、初見では「完全なる運ゲーでは?」と感じるかもしれない。
実際、ダイスロールの出目次第で状況が大きく変わるため、予測不能な展開が続く。
だが、プレイを重ねていくうちに、その“運”をコントロールする手段が少しずつ開かれていくことに気づく。
例えば、「リロール」効果を使えば、任意のダイスを振り直すことができるし、「狙い撃ち」の効果を活用すれば、必要な出目をある程度狙って出すことも可能になる。
さらに、ビルド次第では“完全に運に身を任せる”ような構成もできる。
それゆえ、運に裏切られる場面も当然ある。
しかしこの「歯がゆさ」こそが本作の妙味であり、リスクと引き換えに得られる奇跡的なコンボの成立は、他のデッキ構築系では味わえない快感だ。
個人的には、“ロジックで積み上げていくゲーム”というより、“繊細な感覚で流れを読むゲーム”という印象が強い。
ビルドの方向性やダイスの面構成、さらには特殊効果の理解も必要で、習熟には少し時間がかかるが――
その分、ハマった時の気持ちよさはひとしおだ。

リスクと報酬のはざまで ― “堕落”のシステム
『Astrea』の戦闘を語るうえで欠かせないのが、“堕落”という独自のリスクシステムだ。
本作では、ダイスによって“浄化”と“堕落”の効果が分かれており、浄化は敵への攻撃や自分の回復といった一般的な効果を持つ一方、堕落の出目は敵を回復させたり、自分にダメージを与えたりと、一見すると明確な“ハズレ”として機能している。
やっかいなのは、この堕落の出目をスキップできない点だ。
使用しきらない限りターンを終えられないため、戦闘中に出現した堕落出目と、どう付き合うかが常に課題となる。
さらに、敵には“堕落ゲージ”というメカニズムが存在し、こちらが堕落を与えるたびにゲージが上昇していく。
ゲージが満タンになると、敵は強力な堕落アクションを起こし、戦況をひっくり返すような特殊効果を発動してくる。
つまり、プレイヤーが意図せず敵を強化してしまう――そんな危うさも、このシステムには含まれている。

ただし、“堕落”は完全なマイナス要素ではない。
自分に“堕落”を与えることでスキルを発動可能にする仕組みも存在しており、この選択が本作の戦略性を一段と引き上げている。
本作には「義徳」と呼ばれるキャラ毎に独自のスキルがあり、自分自身に堕落ダメージを与え、HPの一定ラインを下回ると発動可能になる。
つまり、ただ回避すべきデメリットだった“堕落”に、あえて身を委ねることで得られるご褒美が存在しているのだ。
「どこまで自傷を許容し、いつ義徳を解放するか」――この駆け引きこそが、本作の真骨頂といえるだろう。
キャラごとに異なるシナジーや、敵の固有効果なども絡み合い、慣れるまではやや取っつきづらさを感じるかもしれない。
しかしこの“堕落”という存在があることで、本作は単なるローグライクにとどまらず、リスクをあえて選ぶ面白さが際立った作品になっている。
このシステムが理解できてくると、「運を読むゲーム」から「運を操るゲーム」へと印象がガラリと変わってくるだろう。

深まっていく選択 ― ビルドの奥行きとやり込み要素
キャラが変われば、ゲームが変わる
『Astrea』の魅力のひとつは、キャラ(オラクル)が変わるだけで、まるで別のゲームのようなプレイ体験が味わえることだ。
あるオラクルは攻撃や回避の確率操作に長け、狙った出目を引き当てることを前提とした構成になる。
また、センチネルという支援システムを駆使して長期的にアドバンテージを積み上げる者、
さらには呪術的なアプローチで、敵や味方に状態異常のような影響を与えるスタイルの者まで存在する。
見た目や数値の違いだけでなく、ルールそのものが変わってしまったかのような個性の違いが、このゲームにおけるキャラの奥深さだ。
そしてその違いが、プレイヤーに新たな思考と戦略を要求してくる。

パチッと噛み合う構築の快感
『Astrea』では祝福、センチネル、レリック、そしてダイスの出目。
それらすべてが絡み合い、偶然か必然か、ビルドが“噛み合った瞬間”に生まれる快感は格別だ。
特定の祝福が飛び抜けて強いわけではなく、どれもビルド次第で使いどころがあり、選び方次第でガラリと戦略が変わる。
たとえば、「リロール時に敵にダメージを与える」といった効果は、出目を調整する構成に自然と組み込まれ、思考と手札が噛み合った感覚をもたらしてくれる。
ただし、“まんべんなく強い”だけではこのゲームを制することはできない。
むしろ必要なのは**ある種の“とがったビルド”**だ。
どこかに弱点を抱えながらも、特定の条件下で爆発的な強さを発揮するような構成こそが、リスクを背負ってリターンを得る本作の戦略の核といえるだろう。

高難易度で問われる、リスクを取る覚悟
高難易度に挑戦すると、このゲームの真価がじわじわと姿を現してくる。
敵のダイス、特殊効果、ダメージ量、あらゆる要素が強化される中で、プレイヤーはゲームを進める中で選んだビルドで、最後まで生き延びなければならない。
途中でビルドの方向性を修正することは難しく、一手ごとの選択に緊張感が宿る。
特に印象的だったのは、一撃で敗北するようなスリルの中で、リスクを取って選んだビルドが奇跡的にハマり、コンボで逆転の大ダメージを叩き出せた瞬間。
それはただの運ではなく、これまで積み上げてきた経験と知識、そして**“あえてリスクを取った判断”**の結果だとも言える。
この感覚にたどり着くには、キャラやダイス、祝福への深い理解が不可欠だ。
誰でも気軽に味わえるものではないが、だからこそ、辿り着いた先には他のゲームでは味わえない高揚感がある。

感想まとめ
『Astrea: Six-Sided Oracles』は、一見すると運任せなローグライクに見えるけど、実際は、運と戦略の境界線をどう歩くかを問われるような、繊細で奥深い作品。
ダイスという不確定な道具を使いながら、それをどう整えるか、どこまで許容するか、
ときには無理を承知で突き進むか。。そんな選択の連続が、このゲームの面白さにつながっている。
キャラクターが変わるだけで、まるで別ジャンルのように立ち回りが変わる。
ビルドの幅も広く、何度も試すたびに新しい発見があるのも魅力。
ただし、誰でもすぐにその深さを楽しめるわけじゃなく、慣れと経験はある程度必要。
けれど、そこを乗り越えてビルドが噛み合ったとき、自分だけのプレイスタイルが見えてくる。
そして、リスクを取って勝ち切ったあの瞬間こそ、このゲームがくれる最高のご褒美だったと思う。
ダイスに祈りを込めて、堕落と浄化のはざまで揺れながら進む旅。
その旅の中で「この一手にすべてをかける」という緊張感を味わえるゲームは、そう多くない。